小児科医のお勉強ブログ

若手小児科医が勉強した記録です。

【論文】小児の敗血症バンドル

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JAMAに掲載された、ニューヨーク州で行われた小児の敗血症バンドルに関する論文です。

 

Association Between the New York Sepsis Care Mandate and In-Hospital Mortality for Pediatric Sepsis 

(JAMA. 2018 Jul 24;320(4):358-367.)

 

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2688568

 

背景

小児の敗血症患者の死を契機に、ニューヨーク州は2013年に治療バンドルを策定した。血液培養、広域抗菌薬投与、20mL/kgのボーラス輸液を含む1時間バンドルである。1時間以内のバンドル遵守が予後を改善するかは不明であった。

 

目的

小児敗血症バンドルおよびバンドルの個々の要素とリスク調整院内死亡率との関係を明らかにすること。

 

デザイン

2014年4月1日から2016年12月31日までにニューヨーク州の救急部門、入院病棟、集中治療室におけるコホート研究。ニューヨーク州保健局に報告された敗血症および敗血症性ショックの18歳以下の患者のうち、敗血症プロトコルが開始された1179人を対象とした。

 

比較

敗血症バンドルを1時間以内に完了した群としていない群を比較した。

 

主要評価項目

リスク調整院内死亡率。

 

結果

54施設から1179人の敗血症患者が報告され(平均年齢7.2、男児54.2%、既往歴なし44.5%、ショック68.8%、139人死亡11.8%)、うち139人(11.8%)が死亡した。1時間以内に全てのバンドルを達成したのは294人(24.9%)だった。1時間以内に抗菌薬は798人(67.7%)に投与され、血液培養は740人(62.8%)の患者で採取され、ボーラス輸液は548人(46.5%)に投与された。1時間以内の全てのバンドル達成は院内死亡率を低下させた。(オッズ比0.59、p=0.02) しかし個々の要素を1時間以内にそれぞれ達成しても死亡率は減少しなかった。(血液培養オッズ比0.73、p=0.10;抗菌薬オッズ比0.78、p=0.18;ボーラス輸液オッズ比0.88、p=0.56)

 

結論

小児の敗血症および敗血症性ショックの患者において、ニューヨーク州の敗血症バンドルを1時間以内に達成することは、達成しない場合と比較して、リスク調整院内死亡率の低下に関連する。

 

コメント

敗血症バンドルの小児版です。現在はコロナ禍ですので、1時間以内というのは簡単なようで難しい場合もありそうです。施設によっても達成率は変わってくるでしょう。