小児科医のお勉強ブログ

若手小児科医が勉強した記録です。

【論文】安定した早産児の体温調節のための安価なダンボール製の使い捨てクベース

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EClinicalMedicine published by THE LANCETより、新生児に安価なクベースを使用した際の体温変化に関する報告です。

なんとダンボール製です。

 

 

Disposable low-cost cardboard incubator for thermoregulation of stable preterm infant - a randomized controlled non-inferiority trial

(EClinicalMedicine. 2020;31:100664. Published 2020 Dec 7.)

 

https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(20)30408-9/fulltext

 

背景

インキュベーターラジアントウォーマーは新生児ケアに必須だが、通常1つのデバイスあたり1,500〜35,000ドルのコストがかかり、低〜中収入の国では多くのユニットは手に入りづらい。状態の安定した早産児が低コストインキュベーター(LCI)で体温を維持できるか検討する。

 

方法

LCIは200ドルのサーボヒーターとダンボール製のチャンバーを用いて構成される。我々は2017年5月から2018年3月にかけてインドの第3レベル教育病院でオープンラベル非劣勢ランダム比較試験を実施した。Full feedでインキュベーターまたはラジアントウォーマーを使用している32〜36週の早産児が参加した。我々は96人の早産児を2つのグループ(第1グループ<33週、第2グループ≧33週)に分けた。乳児たちはインキュベーター培養陰性とカンガルーケアを含む48時間のroom airでのモニター管理を経て、LCIと標準的なインキュベーター(SSI)にランダムに分けられた。インキュベーターの温度は皮膚と腋窩温が36.5〜37.5℃になるようにマニュアルで調節された。生後48時間経過したのち、SSIとLCIのインキュベーター内の温度を5日間計測した。primary outcomeは0.2℃の非劣勢マージンで皮膚と腋窩温を維持すること。体温調節の失敗は30分以上腋窩温の異常が持続すること(< 36.5 °C or >37.5 °C)でした。secondary outcomesは低体温とインキュベーター内の温度の追加でした。

 

結果

臨床試験開始前に79人の乳児(82%)はラジアンとウォーマーを使用し、17人の乳児(18%)はインキュベーターを使用していた。SSIとLCIに収容された乳児の中央体重はそれぞれ、第1グループで1355g(IQR 1250-1468) vs. 1415g(IQR 1280-1582)、第2グループで1993g(IQR 1595-2160) vs. 1995g(IQR 1632-2237)であった。SSIとLCI内での平均皮膚温はそれぞれ、第1グループで36.8 °C ± 0.2 vs. 36.7 °C ± 0.18、第2グループで36.8 °C ± 0.22 vs. 36.7 °C ± 0.19だった。SSIとLCI内での平均腋窩温はそれぞれ、第1グループで36.9 °C ± 0.19 vs. 36.8 °C ± 0.16、第2グループで36.8 °C ± 0.2 vs. 36.8 °C ± 0.19だった。繰り返し皮膚温と腋窩温を計測した混合効果モデルは非劣勢の制限内であった。(それぞれ第1グループでは-0.07 °C (95% CI -0.11 to -0.04)、第2グループでは-0.06 °C (95% CI -0.095 to -0.02))体温調節に失敗した乳児はいなかった。中程度の低体温は、SSIに収容された48人のうち11人(23%)と、LCIに収容された48人のうち16人(33%)に生じた。SSIとLCIは設定温度の維持の級内相関係数で優れた信頼性を持っていた。

 

結論

カンガルーケアを経て状態の落ち着いた早産児の皮膚温と腋窩温の維持について、LCIはSSIに非劣勢だったが、インキュベーターの温度は0.7℃高かった。有害事象は生じず、LCIは設定温度の維持に優れた信頼性を持っていた。

 

コメント

温度管理に関しては、ダンボール製のクベースが従来のクベースと同等の性能を有していることがわかりました。湿度や清潔度、密閉度などはどうでしょう?しかし加湿などが不要でfull feedの安定した患児が対象なので、そこまでの性能は要らないのでしょう。使い道はかなり多そうです。

論文には見本も掲載されていて、一見の価値ありです。